二人の弁護士の対談──何を目指し、何を糧にいくつもの壁に挑戦し続けることができたのか。
こんにちは。LegalOn Technologiesの広報担当です。
2023年4月27(木)から29日(土)にかけて開催された「Climbers2023」。各界のトップランナーたちが何を目指し、何を糧に、難局をどう乗り越えてきたのか語り尽くしました。
28(金)には、当社の代表取締役 執行役員・CEO/弁護士の角田と、元大阪府知事・元大阪市長の橋下 徹氏が登壇。
二人で語った、過去の挑戦やそれに向かうためのマインドをLegalOn Nowで振り返ります。
大きな変化を起こした二人の原動力になったものは、“怒り”
角田 これまでの経験の中で一番大変だったことは何でしょうか?
橋下氏 政治の世界では、反対の声をもらうことや抵抗を受けることが多く、本当に大変でしたね。命を狙われそうなときもありました。
公務員改革や各種団体への補助金廃止、大阪都構想など、大きな変革に挑戦していたのもあり、反発の意見をたくさんいただきました。
角田さんはどうですか?
角田 弁護士5年目に、今の会社を起業したことですね。
弁護士として仕事をやってきていましたが、会社を創り、資金調達し、仲間を集め、何もないところからプロダクトを生み出していく。まずはここまでするのに精一杯でした。
橋下さんが、この反発や逆境の中で踏み込んだ当時の思いを教えてください。
橋下氏 大阪を良くしたい。
これは私が政治の世界に踏み込んだ時の思いです。政治に対する不満や怒りを源泉にしていました。角田さんは?
角田 私はもっとクリエイティブな仕事がしたいと思ったからです。
契約書の誤字脱字のチェックという、非効率的な作業をするために司法試験の勉強をしてきたわけじゃない。この作業にしんどさを感じた時、なぜ自分はこんな仕事をしているのだろうという感情がありました。
2016年当時、AIブームでアルファ碁という絶対勝てない囲碁が出てきましたが、そんなすごいものができるなら、私の代わりに誤字脱字くらいチェックしてほしいと思っていました。
橋下氏 私が弁護士になりたての時代から業務は変わっていないはずなので、私の同期も角田さんと同じ思いをしているはずですが、何とかしようとした弁護士は見たことがないが…
角田 AIブームだった時期にアソシエイトの立場だったという、タイミングも重なったと思いますね。ペインをものすごく感じていました。
起業後に直面した、お金、技術、仲間集めの壁
橋下氏 弁護士にプログラミング知識はないですが、どのようにして確立させていったんですか?
角田 最初は書店に出かけてプログラミング入門書を購入し、自分でPCを操作してみていました。
3日間くらい寝ずに作業していたのですが、開発環境すら構築できず、ウサギが少しだけ動く変なものが完成しました(笑)。
これに3日間も費やしていたら、AIを作るなんて無理だと思い、そこから仲間集めを始めました。
橋下氏 次にお金の問題が出てくると思いますが、これはどうしたんですか?
角田 法律事務所も一緒に創立させていたので、そこで稼いだお金を開発に回そうという作戦でいました。しかし、月の売上も数十万というところだったので、人件費さえ賄えない。そして借金に手を出しました。
金融公庫さんからお金を借り、そこからエンジニアの給料を払いました。ただ、1000万~2000万は約10か月で消えてしまうので自己破産かなと思いながら、次はベンチャーキャピタルの資金調達を受けます。
橋下氏 ベンチャーキャピタルからお金を借りるには、将来を語る必要がありますが、プレゼンしたんですか?
角田 そうです。使ったことがないパワーポイントを開き、なんとなくそれっぽい事業計画を書いて、これからの時代は法務とテクノロジーの組み合わせですごく良くなると。ここに可能性があって、日本中の法務業務に携わっている人は同じような課題を抱えているんだというのをプレゼンし、20社くらい回って、出資いただく先を見つけることができました。
無借金の堅実な経営だけが正解じゃない
橋下氏 弁護士であれば無借金でも食べていける職でもあるが、何か挑戦したいと思ったら躊躇せずにプレゼンしてお金を借りることは全く悪ではないですね。
角田 おっしゃる通りです。たしかに自己資金でやり繰りできるのは堅実な経営ができているので素晴らしいと思います。しかし、時間を犠牲にせざるを得ないですよね。
イノベーションがとてつもなく早いスピードで進んでいく時代というのは、時間の価値がとても高い。堅実な利益でやり繰りしていて時代に取り残されてしまうと逆に負けてしまう可能性もあります。
だとすると、多少リスクを背負って外部資金を借りる。調達し、時間を買って時代の波を捉えるという戦略もビジネスモデルによっては選択肢の一つだと思います。
橋下氏 本来弁護士というのはリスクを回避することが仕事。逆にリスクを取るというのは、自己破産するかもという気持ちは、どう整理をつけていたんですか?
角田 あまり気にならなかったんです。
一回覚悟はしたんです。あと10か月うまくいかなかったら自己破産するとなったときに、自己破産したらどうなるんだろうと考えたことがありました。弁護士資格を失うので、「失うのかぁ、どうやって食べていこうか」と。でもいろんなところにさまざまな求人が出ているわけで、時給はさまざまでしたが、「どこかには受かるだろう」と。
橋下氏 たしかに日本には生活保護もありますからね。楽観的に乗り越えていく必要があるかもしれない。完璧な損益計算をして正解を見つけてから踏み出そうとしていたら、永遠に踏み出せないですよね。
角田 そうですね。そして大体計画通りにいかないですから(笑)。
橋下氏 本当にそう(笑)。その都度修正しなければならない。
挑戦に障壁は付き物、諦めずに進むことを忘れない。
橋下氏 プロダクトが確立するまで、どんな壁がありましたか?
角田 フェーズによっていろんな壁がありましたが、最初はAIで契約書をレビューできるものが作れるのかですね。その後は法規制や業界ごとにある商慣習、米国進出などさまざまな壁がありました。特に米国のリーガルテックはものすごく進んでてハードルは高いです。だからこそ飛び込んで勝ちたいんです。
橋下氏 高い壁を乗り越えていく時に、CEOとして心がけていることは?
角田 当たり前ですが、“諦めないこと”ですね。
起業家は自分が創業した会社と自身の人生を重ねやすいです。こうしたいああしたいという思いをそのまま活かしたいんです。
橋下氏 それは角田さんがAIで企業法務や弁護士の在り方、未来をこうしたいという具体的な夢があったからですよね。過去の不満や怒りと未来に対するコミット力。それはどんな壁があったとしても原動力になりますね。
角田が見ているリーガルテックの未来
橋下氏 角田さんはリーガルテックでどういう未来を描いてますか?
角田 法がテクノロジーの力でいろんな企業あるいは個人にとって身近なものとなり、戦略的に使えるようになることですね。
法というのは社会の仕組みそのものだと思っていて、社会のインフラである道路や公共施設、電力もありますが、法もソフトなインフラの一つです。
しかし、日本には約4万件の法令があり、運用されているものもあればされていないものもあります。全て覚えて対処していくのは難しくなってしまっています。
これを可視化し、法を理解してビジネスに使えるようにする。ここをテクノロジーで支えていきたいです。
また、日本だけでなく世界中の社会を支える土台を私たちの技術が担えれば、世の中がもっと安心して前進できるような社会に変えられるのではないか。そこに貢献できるんじゃないかと思っています。
そして、自分たちが努力した先の世の中はどう変化するのか、実際に見たいですね。
最後に……
角田 皆さんそれぞれに夢やなりたい自分があって、やりたいこともあると思います。それを実現するために自分を信じて発信し、仲間を集めて諦めなければ、道が開けて後悔しない人生になるんじゃないかなと思います。頑張る皆さんを全力で応援しています!
橋下氏 誰にでも平等にある可能性。それを最大限に活かせるか、そうではないかは本人の意思次第です。可能性に賭けることほど人生に満足することは無いと思っています。
ビジョンに向かって、未来に向かって走っていく。その熱量が出てくると自然と人が集まって、不思議なことに好機到来します。未来に向かって可能性にチャレンジするという姿勢を大切にしてほしいです。
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<プロフィール>
橋下 徹
1969年、東京都渋谷区生まれ。大阪府立北野高等学校(在学中に全国高校ラグビー大会に出場、西日本代表、日本代表候補)、早稲田大学政治経済学部卒業。大学卒業同年に司法試験合格。1997年に弁護士登録、翌年1998年には橋下綜合法律事務所を開設。「行列のできる法律相談所」(日本テレビ系)などテレビ番組に多数出演後、2008年2月、当時最年少であった38歳で第52代(民選17代)大阪府知事に就任する。2009年には世界経済フォーラム(ダボス会議)のYoung Global Leadersの1人に選出された。2011年第19代大阪市長に就任。知事経験者が政令市長に就任したのは日本史上初である。2015年12月大阪市長任期満了をもって政界を引退した。現在は、国内外で政治経済の取材を行いつつ、テレビ番組出演や講演、執筆活動等多方面で活動中。家族は妻、七人の子(三男、四女)。
角田 望
株式会社LegalOn Technologies 代表取締役 執行役員・CEO/弁護士
2010年京都大学法学部卒業、同年、旧司法試験合格、2012年弁護士登録(第二東京弁護士会所属)。2013年森・濱田松本法律事務所入所、M&Aや企業間紛争解決に従事。2017年、法律事務所の同僚である小笠原匡隆(現・LegalOn Technologies代表取締役共同創業者)と共に独立し、株式会社LegalOn Technologiesと法律事務所ZeLo・外国法共同事業を創業。LegalOn Technologiesの代表を務める(現任、ZeLo副代表弁護士も兼任)。AI契約審査プラットフォーム「LegalForce」、AI契約書管理システム「LegalForceキャビネ」を通じて弁護士の法務知見と独自の技術を組み合せ、企業法務における業務の品質向上と効率化を実現するソフトウェアを開発・提供。