「LegalForceひな形」1,000点突破! ……のすごさがイマイチ分からない人のための話
法務担当ではない方でもわかる、契約書の話。
LegalOn Technologiesが提供するAI契約審査プラットフォーム「LegalForce」は、このたび利用できる契約書・規約等のひな形数が1,000点を突破※しました!
といっても、契約書審査に関わらない人にとっては、それがどれだけすごいことなのかピンとこないかもしれません。
そこで今回は、ひな形を作成するグループのリーダーの弁護士・今野に、「契約書ひな形って何?」から1,000点突破の大変さがわかる話まで、ざっくばらんに聞いてきました。
ひな形作成の裏話もあるので、法務関係者の方も必見です!
※取材時点。2023年10月現在、1,100を突破。
(ほぼ)全ての契約書は「ひな形」から作られる
― 先日、契約書や規約等のひな形が1,000点を超えたということで、おめでとうございます!まずはお気持ちを。
今野 ありがとうございます。
4桁の大台は業界初※ということで、AI契約レビュー業界のトップランナーとしての面目躍如を果たすことができたかなと、うれしく思っています。
※自社調べ
― 今回は法務に詳しくない方にもわかるよう、ひな形についてお伺いしたいのですが、そもそも契約書のひな形は何のためにあるのでしょうか?
今野 契約書のひな形とは、つまりはテンプレートなのですが、主な存在理由は「効率化」と「ミスの防止」ですね。
実は契約書って、真っさらな状態のWordを立ち上げてゼロから作成するということはまずないんです。
世の中、全く新しい取り組み・サービスというものはほぼありませんから、それに付随して契約もほとんどが「どこかに似たような内容が存在するもの」になります。
ですから、法務の人が契約書をドラフトする際は、ほとんどの場合、書籍などで使えそうなひな形を探すか、自社の過去の取引から似たような契約書を引っ張ってきて、それをベースにして作成するという流れになります。
つまり、ひな形を見つけることが契約書作成のスタート地点になるわけです。
作成したい契約書にフィットするひな形を見つけることができれば、あとは個別の事情を肉付けしたり、不要な条文を削除したりすることで、案件に即した契約書を作ることができます。
ひな形を活用することで、契約書作成にかかる時間を大幅に削減することができるのです。
同時に、必要な条文の抜け漏れなどのリスクを減らすためにひな形を活用しているという面もあります。
ひな形には、その取引において必要な条文がある程度入っていることが多いので、自分一人で考えるよりも、ひな形を使うほうが必要条文の抜け漏れは生じにくいのです。
法務担当者は契約書作成・審査以外にも多くの業務を抱えており、みなさん多忙です。
ひな形を活用した効率化とミスの防止は、法務業務にはなくてはならないものなのです。
― なるほど、ひな形は契約書作成にはなくてはならないベースなのですね。
他にもひな形の用途はあるのですか?
契約書の審査時に修正すべき箇所を見つけた場合、他のひな形から適切な条文をもってきて転用するといった使い道もあります。
契約書を審査する際の悩みの一つに、「こういう内容の条文に修正したいけれど、どう書けばよいかがわからない」というものがあります。
たとえば、知的財産権の条文を自社に有利に修正したいけれど、どのように修正するのがよいかわからない、といった場合です。
このような悩みは、いくつかひな形の条文を見比べてみて、使いたい条文をもってくることで、解決できることがあります。
なお、「LegalForce」には条文検索機能がありますので、1,000点を超える「LegalForceひな形」や自社の過去の契約書などから条文単位で検索し、欲しい条文を他のひな形から見つけ出すことも簡単にできます。
ひな形がない世界の契約書修正はかなり、つらい
― ひな形は契約書の修正にも使えるということですが、ひな形を使わないとどんな作業になるのでしょう?
ネットで調べる、関連書籍をあたる、リーガルリサーチサービスを利用するなどして、必要な条文や考え方を探してきて加工して修正文案を作る、という作業になると思います。
これは結構大変な作業なんです。
例として損害賠償に関する条文の修正を考えてみましょう。
Webで「損害賠償」を検索すると、「損害賠償とは?」とか「損害賠償請求のやり方」といった関係のない情報が多くヒットします。
いくつかサイトを見てみても、損害賠償の解説しかなく、結局条文は掲載されていなかった、というような無駄も発生します。
書籍やリサーチサービスでも、この点はあまり変わらないです。
意外に、修正に使えるような条文単位で探すことはかなり難しいんですね。
あったとしても本当にその条文でよいのかを調べなければいけないなど、そのままでは使えない場合も多いです。
― それは大変ですね……
しかし、Webには無料でダウンロードできるひな形も見つかります。それで十分ではないのですか?
たしかにWeb上には、無料でダウンロードできるひな形が存在します。
しかしそれが自社にとって適切なひな形かどうかは、慎重に見極めないといけません。
たとえば同じ売買契約でも、買い手か売り手かによって有利な条文、不利な条文が存在します。
また、取引相手との関係性によっては、中立的な内容の契約書を作成したいという場合もあります。このように、立場や条件によって適切な契約内容は変わります。
また、そのひな形が「いつ作成されたか?」も重要です。
法令が改正された場合、ひな形の規定が法令に違反している、といったこともあり得るからです。
「LegalForceひな形」は、提携している法律事務所の弁護士と当社の弁護士が協働し、立場ごとのひな形を作成・監修しています。
法改正によるアップデートにも、改正法施行前の早い段階からご利用いただけるように対応しています。
「LegalForceひな形」なら、最新の、信頼できる、適切なひな形をすぐに見つけることができるんです。
契約書ひな形は何点あっても足りない
― ひな形は1,000点を超えましたが、いくつあれば足りるのでしょうか?
「いくつあれば十分」ということは言えないですね。
冒頭で話したように、契約は似たような内容が存在することが多いのですが、現実の取引は、それぞれ個性があり、細かい内容は千差万別です。
たとえば「業務委託契約」一つとっても、物品販売やWebサイト・グラフィックデザインの制作、運送など委託内容はさまざまで、数え上げればきりがありません。
また、委託側、受託側などの立場や、下請法などの法令の適用の有無によっても必要なひな形は異なります。
さらにクラウドサービスやAIの利用に関する契約など、社会の進歩に伴い新たな契約ニーズも生まれています。
ひな形は多ければ多いほど、そうしたケースに幅広く対応することが可能です。
1,000点あってもまだまだ足りないなというのが、実際のところです。
― 先ほど社外の弁護士と共同して作成していると聞きました。社内にも弁護士がいるのに、外部の協力を頼むのですか?
そうです。理由は二つあります。
一つは、外部の法律事務所に作成を委託することで、専門性の高い先生方に作成いただけるという点です。
最近では提携先も広がっており、医療・製薬分野で松田綜合法律事務所や決済・金融分野で片岡総合法律事務所などにも協力をお願いしています。
外部に委託することで、必要なひな形を必要なタイミングでリリースできる、というのがもう一つの理由ですね。
ひな形作成は、かなり労力のかかる作業なので、社内の弁護士だけではこれだけのひな形を継続してリリースし、メンテナンスしていくというのは現実的ではないんです。
基本的には、私のチームでひな形の企画立案を行い、外部事務所が専門性を活かしてひな形を作成、それを利用者の実情に詳しい私たち内部の人間がチェックする、という体制です。
単にチェックといっても、法令との整合性や改正を踏まえているかの確認、解説の追加などやるべきことは多岐にわたるので、この体制で和英合わせて月数十点のひな形をリリースしていくのは大変です。
少しでも使いやすく、クオリティの高いひな形になるよう、日米の弁護士、法務スキルのあるメンバー全員で日々努力を重ねています。
正解がないなかで試行錯誤するひな形づくり
― ひな形作りの大変さにはどんなことが挙げられますか?
より多くのお客様にとって使いやすいひな形を作ることですね。
たとえば、意図が分かりにくい条文には解説コメントを付けるのですが、付ける・付けないの判断、どんな解説を付けるかは常に悩みます。
解説は、経験の少ない人にとっては有用ですが、詳しい人にとっては邪魔になるからです。
また、立場ごとの作り分けも難しい問題です。
有利すぎるひな形を作っても、相手方の承認が得られにくく使い勝手が悪くなります。
実務上、一般的な契約内容を考慮しつつ、立場に寄せた内容に調整するのは、正解がない中で試行錯誤する難しい作業です。
いったんリリースしても、お客様のフィードバックを参考に、アップデートを繰り返すこともありますね。
― ひな形づくりは、弁護士の人にとってどんな面白さがありますか?
「世の中にはこんなにたくさんの契約が存在するんだ」ということを肌で感じられることですね。
ひな形開発は、あらゆる分野や契約類型が対象ですから、私自身、初めて見る契約が多く、好奇心を刺激される機会が多いです。
さらに、自分の仕事が多くの人の役に立っているのが分かりやすい点も魅力です。
たいていの契約書は秘密情報扱いなので、法務を担う人って、自分の仕事に対して多くの人からフィードバックを得られる機会は意外と少ないんですよね。
ひな形の業務では、新しくリリースするたびお客様からフィードバックをいただくのですが、これは本当にやりがいにつながっています。
キャリアの面から見ても、法務の知見を養いつつ、データやフィードバックを分析して企画立案するなど、ビジネススキルを磨けることが大きなメリットですね。
― 契約書ひな形の世界の奥深さが見えた気がします。
今後はひな形2,000点を目指してがんばってください。ありがとうございました!
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