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法務担当者の前に立ちはだかる経験値という壁。弁護士が開発に携わり、法律知識の平準化を進める。

こんにちは、広報の阿部です。
2023年8月17に、AI契約審査プラットフォーム『LegalForce』が、自動レビューした契約書にひもづく国のガイドラインや、必要書類のひな形を提示する「実務対応アラート」機能を実装しました。

https://legalontech.jp/6674/

今回は、この新機能の開発を起案した法務開発に所属する軸丸弁護士に取材。
新機能の開発を起案した背景や、弁護士が製品開発していく過程をご紹介します。

軸丸 厳(じくまる・げん)
2015年3月関西学院大学法学部卒業、2017年3月神戸大学法科大学院修了。2018年に司法修習修了後、2019年に阪急阪神ホールディングス株式会社入社。企業内弁護士として、同社法務担当と阪急電鉄株式会社法務担当を兼務。2023年2月にLegalOn Technologiesに入社。


機能開発のきっかけは、新人弁護士の頃にぶつかった壁

─ まず、『LegalForce』とはどんなサービスでしょうか?

『LegalForce』とは、AIで契約書のチェックができ、品質の向上と効率化を実現するサービスです。
2019年4月に正式ローンチしてから、約4年が経った2023年8月時点で正式導入社数3,000社を突破しており、多くの企業や法律事務所のお客様にご利用いただいています。
2023年8月時点で、『LegalForce』の自動レビュー機能によって審査できる契約書は、60類型以上となり、契約書のひな形も1,000点を越え、日々進化を遂げています。

─ 今回実装された機能を教えてください。

今回、「実務対応アラート」という『LegalForce』上でレビューした契約書に関連する国のガイドラインや、ひな形を提示する機能を実装しました。(下図参照)
この機能は、契約締結する上で守るべき国のガイドラインや、必要書類の契約書ひな形を提示することで、実務における注意点を網羅的に把握することができるようになります。
これにより、ガイドラインに沿った対応を忘れることなく実行ができ、必要書類の抜け漏れをなくすなど、実務上のトラブルを予防することが可能です。

─ 開発に至った背景は何でしょうか?

私が前職でぶつかった、経験値という壁ですね。
修習を終えた後、鉄道や不動産など、人々の生活環境を支える阪急阪神ホールディングスに企業内弁護士として入社しました。
私は、企業内弁護士として契約業務の実務を積んでいく中で、いくら資格があっても実務をする上で参考にできるものは、経験ではないかと思うことがありました。
新人弁護士にとって、契約内容を見ただけで実務における注意点を、パッと頭に浮かべることはとてもハードルが高いです。
これができるようになるまで、3年程度は実務経験を積む必要があり、“当たり前の苦労”をみんなが体験します。
でも、しなくても良い苦労ってあると思うんです。

新人の頃の軸丸弁護士

─ 前職での経験が開発のきっかけだったんですね。

そうですね。弁護士と言えど実務経験がなければ新人に変わりはないので、ほとんどの弁護士が最初に通る道だと思います。
ただ、私が悶々としていた時に、契約実務の経験がなくても質の担保ができる『LegalForce』に出会い、これは革新的なサービスだと驚きと感動から導入をしました。
実際に使いこなしていくうちに、「もっと●●な機能があればいいのに」と新たなアイデアも出てきたことと、ちょうどLegalOnが法務開発の弁護士を募集していたので応募し、現在ではサービスを開発する側の立場になりました。
そして入社後早々に、「実務対応アラート」機能の案を法務開発の定例ミーティングで提出し、他の弁護士や開発に携わる方々から賛同の声を頂いて、提案を進めて実装までいこうという意思決定が出されました。

エンジニアとの協働で初めて経験した製品開発

─ 開発を始める時、まず何から始めましたか?

どのようにして『LegalForce』の機能に落とし込めば良いのかわからなかったので、エンジニアに話を聞き、「できること」と「できないこと」の調整から始めました。
何度も議論を重ね、画面の仕様はどうするのか、データとしてダウンロードする時はどうレイアウトするのか、といった細かな部分の決定まで携わることができました。

─ 機能開発の実現まで、困難だったことは何でしょうか?

さまざまな部門や職種の方を巻き込みながら、イメージしている機能の開発をスムーズに進めていくことです。
まず、部門や職種が違えばカルチャ―も異なりますので、「当たり前」が違います。
また、使う言葉や専門知識も多様であるため、相手の目線に合わせてコミュニケーションを取ることにかなり気を付けていました。実際、勉強することのほうが多かったです。

そして、「実現したいこと」と「実現できること」は違いますので、エンジニアとの相談も頻繁にさせてもらっていました。
これまでなかったものを創り上げるのですから、エンジニアにとって高い目標を背負ってもらうことになります。
それを意識した上でコミュニケーションを取らないと、想像とは違ったものができたり、予定していたリリース日より遅れてしまうなど、最終的にお客様へ迷惑がかかることになります。
この点は、初めての経験だったので難しいと感じましたね。

─ 今後の心がけたいことが見つかりましたか?

開発者側の視点を持ち、エンジニアに対してどのようなことを実現したいのかを伝え、伴走しながら開発設計を構築していくことですね。
私自身、弁護士としてここまで歩んできましたが、企業内弁護士は事業推進を裏で支援する立場が多く、開発者であるエンジニアと一緒に働く機会はほぼありません。
そのため、エンジニアが開発をする上でどのような情報を求めているのか、どの視点で専門的な話題をすれば良いのかがわからなかったのです。
今回の経験から、開発者側の立場や視点を持つことで、スムーズな開発設計を実現できることを学びました。

─ 実際に機能が開発され、実装された時どう思いましたか?

正直、とても興奮しました。
入社してすぐに出した案が採択されたのも嬉しかったですし、実際に製品化されたのはとてもうれしかったですね。
前職では企業内弁護士として、事業の推進を支援する立場だったのが、今ではフロントに立って事業の推進をすることができています。
また、この法務開発の弁護士という職種は、自身の出した成果に対する影響度が大きいと思います。
目の前のお客様や、社内の決まったメンバーだけでなく、幅広い業界の法務担当者や弁護士に価値提供ができるので、他では経験できない貴重な体験ができていると感じます。

『LegalForce』で、法務全体のレベルを底上げしたい

─ 今回開発した機能は、どんな人に活用してほしいですか?

業界や経験値を問わず、契約業務の実務に携わっている方全員に活用いただきたいです。
「実務対応アラート」は、契約書レビューをして「実務上注意すべき点をアラートとして表示されたから、この視点に気付けた。」、「相談者に対して、プラスαのアドバイスができた」など、現在の業務レベルより視点を上げる効果を持つと考えています。
これから契約実務の経験を積む方や、すでに知見を有している方が契約書レビューする際の一助になれればと思っています。

─ 今後挑戦したいことは何でしょうか?

契約書ひな形や、自動レビューが可能な契約類型の拡充、新たな機能の開発などさまざまなことに挑戦していきたいです。
また、大規模言語モデルであるChat GPTの普及により、多くのサービスはあらゆる可能性を秘めています。
この可能性を実現するべく、これまで提供できていなかった改題解決のメソッドを生み出すために、どんどん開発に携わっていきたいです。

軸丸さんありがとうございました!
当社では、この記事で取り上げた『LegalForce』や法的コンテンツの開発を担う弁護士を募集しています。
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